
加工賃の「時間チャージ」を自社で計算する手順
見積を出すとき、1時間あたりのチャージ単価を「だいたいこのくらい」で決めていませんか。
昔から使っている単価。 同業の人にちらっと聞いた相場。 元請けから「これくらいで」と言われた金額。
それで回っているうちは問題に見えません。 でも、電気代も人件費も上がっているのに単価がそのままだと、忙しく動いているのに利益が薄い、という状態になりがちです。
これは、見積の付け方が雑だからではありません。 自社の数字からチャージを出す手順を、習う機会がなかっただけです。 よくあることで、責められるような話ではありません。
この記事では、自社の数字から「1時間あたりいくらで売ればいいか」を出す手順を、計算例と一緒に整理します。
結論:時間チャージは「その機械に1年でかかる費用 ÷ 1年で実際に動かせる時間」で出せます。年間費用を集めて、実稼働時間で割る。この2ステップで、勘ではなく自社の数字に基づいた単価が見えてきます。
チャージ単価がわからないと、値引き交渉のときに「どこまで下げて大丈夫か」の線が引けません。 逆に、自社の数字で根拠を持っておくと、安すぎる仕事を静かに見分けられるようになります。
まずは1台、よく使う機械から計算してみましょう。
計算の手順を小さく分ける

一度に全部の機械をやろうとすると大変です。 まずは、よく動かしている1台に絞って、順番に進めましょう。
ステップ1:その機械に1年でかかる費用を集める。 ひとつの機械を1年動かすのに、何にお金がかかっているかを書き出します。
- その機械を担当する人の人件費(社会保険料も含めた会社負担分)
- 機械の購入費を年数で割った分(減価償却。リースならリース料)
- 電気代・エア・切削油などの動力・消耗品費
- 工具・刃物・治具の費用
- 家賃・保険・事務など、現場全体でかかる間接費を機械の台数で分けた分
細かく完璧にしなくて大丈夫です。 まずは大きい費用から、ざっくりでいいので拾います。
ステップ2:1年で実際に動かせる時間を出す。 ここが見落とされやすいところです。 「1日8時間 × 年240日 = 1,920時間」をそのまま使うと、単価が安く出てしまいます。
実際には、段取り替え・手待ち・打ち合わせ・清掃・保全などで、機械が削っていない時間があります。 この「実際に加工している時間の割合(実稼働率)」を、肌感覚でいいので掛けます。
ステップ3:費用 ÷ 実稼働時間で、1時間あたりを出す。 ステップ1の年間費用を、ステップ2の実稼働時間で割ります。 これが、その機械の「原価としての時間チャージ」です。 ここに利益を乗せたものが、見積で使う単価になります。
具体的な計算例
数字を入れて、一度通してみましょう。 (金額は説明用の例です。自社の実際の数字に置き換えてください。)
ある機械1台を、1人で担当しているとします。
ステップ1:年間費用
- 担当者の人件費(会社負担込み):400万円
- 機械の償却・電気・工具・間接費など:200万円
- 合計:600万円
ステップ2:年間の実稼働時間
- 1日8時間 × 年240日 = 1,920時間
- このうち、実際に加工している割合を7割とすると
- 1,920時間 × 0.7 = 約1,344時間
ステップ3:1時間あたり
- 600万円 ÷ 1,344時間 = 約4,500円/時
つまり、この機械は原価だけで1時間あたり約4,500円かかっている、ということです。 もし今、3,500円のチャージで受けている仕事があれば、その分は利益が出ていない可能性があります。
ここに目標とする利益を乗せて、はじめて「売っていい単価」になります。 実稼働率を7割と見るか6割と見るかで単価は変わるので、自社の実感に近い数字で一度出してみるのが大切です。
なお、ここで出るのは社内の目安です。 実際の取引価格は相手や条件によって決まりますし、業界の慣行もあります。 あくまで「自社のコストの下限を知っておくための数字」として使うと、交渉のときに足元がぶれません。
時間チャージ計算のチェックリスト
- まず計算する機械を1台に絞ったか
- 人件費は会社負担(社会保険料など)も含めたか
- 機械の償却・リース料を年あたりで入れたか
- 電気・工具・消耗品など動力費を拾ったか
- 家賃・保険などの間接費を台数で割って乗せたか
- 「1,920時間そのまま」ではなく実稼働率を掛けたか
- 出たチャージと、今の見積単価を見比べたか
全部を一度にそろえなくて大丈夫です。 今日は、よく使う1台の年間費用をざっくり書き出すだけでも、十分な一歩です。
よければ、こちらも
- 見積に費用を乗せ忘れないようにしたいときは、原価の見込み違いを防ぐ見積の考え方 も一緒にご覧ください。
- 単価の根拠を持って交渉に臨みたいときは、相見積もりで買い叩かれない提案の仕方 も参考になります。

時間チャージは、一度で完璧な数字を出す必要はありません。 ざっくりでも自社の数字から出してみると、これまで勘で決めていた単価に、確かな足場ができます。
派手な作業ではありませんが、自分の現場のコストを知っておくことは、安すぎる仕事から会社を静かに守る力になります。 1台ぶんの費用を書き出してみようと思った時点で、その見積はもう一歩前に進んでいます。