
チョコ停を記録して減らす。小さな停止の潰し方を整理
「あ、また止まった」。 材料が少し引っかかった。センサーが誤検知した。ワークが詰まった。手を伸ばして直せば、数十秒でまた動き出す。
すぐ直るから、わざわざ記録はしない。誰もが自然にそうしていますよね。 でも一日の終わりに数を振り返ると、なんだか予定より進んでいない。残業してカバーする——そんな日が、心当たりありませんか。
この記事では、その「すぐ直る小さな停止」=チョコ停を、記録して少しずつ減らしていく進め方を一緒に整理します。難しい分析や新しい設備は使いません。今日から紙とペンで始められる範囲に絞ります。
結論:チョコ停を減らすコツは、原因を最初から突き止めることではありません。まず「短い停止も一度、数だけメモに残す」ことです。止まると一番困る機械を1台選び、正の字で回数を数える。1〜2週間ためて、よく出る止まり方トップ3を見つける。そのうち1つだけを、まず潰す。この順番が、遠回りに見えていちばんの近道です。
チョコ停が気になったとき、いきなり「なぜ止まるのか」を考え込まなくて大丈夫です。 最初にやりたいのは、原因さがしより「回数を見えるようにする」ことです。
まずは、次の順で1台にしぼります。
- 止まると一番困る機械を1台だけ選ぶ
- 止まったら「時刻・止まり方・回数」だけを一言メモする
- 1〜2週間ためて、よく出る止まり方を数える
この1台が落ち着いてから、次の機械へ広げます。 全設備を一度に見張ろうとすると、記録そのものが続かなくなってしまいます。
何が起きているか — チョコ停は「記録に残らないから減らない」

チョコ停とは、設備が数秒から数分だけ止まって、人がちょっと手を加えればすぐ復帰する短い停止のことです(正式な故障として修理伝票が起こるような止まり方とは区別します)。ワークの詰まり、材料の引っかかり、センサーの誤検知、切りくずのからみ、エア圧の一時低下——町工場の自動機・半自動機では、日常的に起きています。
やっかいなのは、一回一回が短いことです。 30秒で直るから「トラブル」として記憶に残らない。日報にも書かない。だから、誰も減らそうとしない。減らそうにも、どれが一番多いのかが分からない。
つまりチョコ停は、大きな故障のように痛くないぶん、記録に残らず、記録に残らないから減らない、という仕組みでずっと居座り続けます。 逆に言えば、記録に残すだけで、減らすための第一歩は踏み出せています。
具体例 — 現場で「あるある」なチョコ停
言葉だけだとピンときにくいので、よく見かける止まり方を挙げてみます。自分の現場と重なるものが、きっとあるはずです。
- 材料や部品が、供給の途中で引っかかって止まる
- 切りくず(切粉)がからんで、センサーが「異常」と検知して止まる
- ワークがうまく座らず、次の工程に進めずに止まる
- エア圧や油圧が一瞬下がって、動作待ちで止まる
- 完成品の排出シュートが詰まって止まる
- 段取り替え直後だけ、位置決めがずれて止まる
こうして並べると、「たしかにこれ、毎日直してるな」というものが見えてきますよね。 毎日直しているということは、裏を返せば、まだ誰も原因まで手を付けていないというサインでもあります。
影響 — 積み重なると、可動率と納期を静かに削る
チョコ停の本当の怖さは、合計するとまとまった時間になることです。
たとえば、1回1分の停止が1日20回。それだけで20分です。 段取りや昼休みを別にして、実働7時間の機械なら、1日20分は動ける時間のおよそ5%。1か月20日なら、約7時間——ほぼ丸1日ぶんの加工時間が、気づかないうちに消えている計算になります(1分×20回×20日=400分≒6.7時間)。
この「機械が動きたくても動けなかった割合」を、現場では可動率(べきどうりつ)と呼びます。設備をどれだけ買っても、可動率が低ければ実際に作れる量は増えません。チョコ停は、その可動率をいちばん静かに削っていく相手です。
そしてもう一つ。人の手が要る点も見逃せません。 数十秒の停止でも、その都度、誰かが手を止めて機械に向かいます。多台持ちの現場なら、他の機械の様子見が後回しになり、そこでまた別の遅れが生まれる。チョコ停は、時間だけでなく人の集中も細切れにしてしまいます。
だからこそ、大きな改善の前に、この小さな停止に一度きちんと目を向ける価値があります。
明日やること — 1台・1枚・正の字から
構えなくて大丈夫です。明日できる最低ラインは、たった3つです。
1. 止まると一番困る機械を1台だけ選ぶ ボトルネックになりがちな機械や、無人でまわしたい自動機が候補です。あれもこれもは狙わず、まず1台に集中します。
2. その機械のそばに、記録用紙を1枚貼る 列は「時刻・止まり方・回数」の3つだけ。止まったら、止まり方の欄に正の字を一本足す。これなら復帰のついで、数秒で書けます。書くことを増やすと続かないので、原因や対策は今はまだ書かなくて構いません。
3. 1〜2週間ためて、正の字を数える 一番多い止まり方はどれか。棒グラフにするまでもなく、正の字の長さを見比べれば分かります。まずはトップ1つだけを選び、「なぜそこで止まるのか」をそこで初めて考えます。
原因を一つ潰したら、また記録に戻る。この「ためる→一番多いのを潰す→またためる」をゆっくり回すだけで、チョコ停は着実に減っていきます。
チェックリスト
今日やる最低ライン(この3つだけ)
- 止まると一番困る機械を、1台選べているか
- その機械のそばに「時刻・止まり方・回数」の記録用紙を貼ったか
- 止まったら正の字を一本足す、と現場で声かけできているか
1〜2週間たったら、ここから先へ
- 正の字を数えて、よく出る止まり方トップ3が分かったか
- トップ1つだけを選んで、「なぜ止まるか」を現場で話せたか
- 潰した止まり方が本当に減ったか、記録で確かめたか
- 減ってきたら、次の1台へ記録を広げられそうか
すべてを一度にそろえなくて構いません。 まずは1台、正の字を数え始める。それだけでも、見えていなかった時間が見えてくる現場に、一歩近づいています。
よければ、こちらも
- 記録した点検や停止を毎日続く形にしたいときは、続く設備点検表のつくり方 もあわせてどうぞ。
- よく出る止まり方の原因を掘り下げたいなら、なぜなぜ分析の進め方 で整理しています。
- 段取り替え直後の止まりが気になるなら、シングル段取りの始め方 も参考になります。

チョコ停を減らす取り組みは、一度で完璧にできる仕事ではありません。 まず1台の正の字を数えて、一番多い止まり方を一つ潰す。次の1台へ。その積み重ねで、現場は少しずつ「止まらない現場」に変わっていきます。
派手ではなくても、今日「また止まった」を流さずに正の字を一本足した、その一回が、動ける時間と納期を静かに守っています。 「すぐ直るから」で終わらせず、数えてみようと思えた時点で、その改善はもう始まっています。