
なぜなぜ分析のやり方、不良の原因を一緒にたどる
「この前直したはずの不良が、また出てしまった」。 朝、手直しの部品を前にして、ため息が出る。そんな朝は、ものづくりの現場では珍しくありません。
その場で対処はした。担当者にも声をかけた。 それでも同じ不良がくり返すと、「自分のやり方が甘いのかな」と落ち込んでしまいますよね。
でも、多くの場合、原因は人の不注意ではなく、仕組みのどこかに残っています。 この記事では、人を責めずに本当の原因までたどる「なぜなぜ分析」の進め方を、一緒に整理します。
結論:なぜなぜ分析は、起きた事実から「なぜ」を順番にたどって、仕組みの原因まで降りていく方法です。コツは3つだけ。事実から始める/人ではなく仕組みを問う/対策できる深さで止める。この3つを意識すると、犯人探しにならずに再発を減らせます。
なぜなぜ分析は、不良が起きた事実から「なぜ起きたのか」を何度かたどって、おおもとの原因にたどり着く方法です。 むずかしい道具はいりません。紙とペンがあれば、今日から始められます。
ただ、やり方を少し間違えると「誰が悪かったのか」を探す時間になってしまいます。 そうならないために、まず次の3つだけ意識してみましょう。
- 推測ではなく、確かめた事実から始める
- 「人」ではなく「仕組み」に向かって問う
- 自分たちで対策できる深さで止める
何が起きているか

不良が出たとき、私たちはつい「気をつけよう」で終わらせがちです。 でも「気をつける」は、人の集中力に頼った対策です。忙しい日や疲れている日には、また同じことが起きてしまいます。
なぜなぜ分析がうまくいかない現場には、だいたい共通点があります。
- 最初の「なぜ」が、確かめていない推測になっている
- 答えがいつも「確認不足」「意識が低い」など、人の問題で止まってしまう
- 「なぜ」を5回と決めて、無理に深掘りしすぎている
「なぜ5回」という言葉が有名なので、5回やらないといけないと思いがちです。 でも回数は目安です。大事なのは、自分たちで直せる原因にたどり着くこと。3回で届くこともあれば、4回で十分なこともあります。
具体例で見る
たとえば「指定の寸法より大きい部品が混ざっていた」という不良が出たとします。 これを、人を責めずにたどると、こんなふうになります。
- 現象:寸法が規格より大きい部品が出荷前検査で見つかった
- なぜ①:加工後の寸法がばらついていた
- なぜ②:刃物(工具)が摩耗していたのに使い続けていた
- なぜ③:工具を交換する目安が決まっていなかった
- なぜ④:交換時期を判断できるのがベテラン1人だけだった
ここまで降りると、「担当者が確認しなかったから」ではなく、「交換の目安が仕組みになっていなかったから」が見えてきます。 対策も、「気をつける」ではなく「工具の交換目安を数で決めて、誰でも判断できるようにする」という具体策に変わります。
注意したいのは、①の「ばらついていた」を確かめずに書かないことです。 本当にばらついていたのか、測定の記録や現物で確認してから次の「なぜ」へ進みます。事実の上に積まないと、分析全体が推測の塔になってしまいます。
影響
原因が人で止まると、対策も「次から注意」になります。 すると、しばらくは収まっても、人が変わったり忙しくなったりした時に、また同じ不良が顔を出します。手直しの時間も、お客さまへの謝りも、くり返すたびに現場の元気を削っていきます。
逆に、仕組みの原因まで届くと、対策は人に依存しなくなります。 工具の交換を数で決める。限度見本をそばに置く。記入のタイミングを決める。こうした小さな仕組みが一つ増えるたびに、現場は少しずつ楽になっていきます。
明日やること
大がかりに始めなくて大丈夫です。まずは直近の不良を一つ選びましょう。
まず、現象を「事実」で一行書く。 「いつ・どの工程で・何が・どうなったか」を、見たままで書きます。 「ミスがあった」ではなく「外径がφ20.05で、規格上限φ20.00を超えていた」のように、確かめられる形にします。
次に、「なぜ」を一つずつ、確かめながら降りる。 一つ「なぜ」を書いたら、それが本当かを現物や記録で確認してから次へ進みます。 答えに「○○さんが」と人の名前が出てきたら、「ではなぜ、その人がそうせざるを得なかったのか」と仕組みに問い直します。
その後、対策できるところで止めて、一つだけ決める。 たくさん対策を並べると、結局どれも手がつきません。 「明日から変えられる一手」を一つだけ選びます。小さくていいので、必ず実行できるものにします。
なぜなぜ分析は、文書をきれいに作ることが目的ではありません。 紙が多少ぐちゃぐちゃでも、再発が止まればそれで十分です。
なぜなぜ分析のチェックリスト
- 出発点が、推測ではなく確かめた事実になっているか
- 「いつ・どこで・何が」が具体的に書けているか
- それぞれの「なぜ」を、現物や記録で確認したか
- 答えが「人の不注意」で止まっていないか
- 「ではなぜ、そうなる仕組みだったか」と問い直したか
- 自分たちで対策できる深さまで降りているか
- 対策を一つに絞り、明日から実行できる形にしたか
- 同じ不良が再発していないか、後日ふり返る予定があるか
全部を一度にそろえなくて大丈夫です。 まずは「人ではなく仕組みに問う」。この一つを意識するだけで、分析の質はぐっと変わります。
よければ、こちらも
- そもそもの不良を見つける仕組みは、検査表のつくり方、まず決めたい3つの項目 で整理しています。
- 原因をたどる中で見つけたコツや判断を次の人へ残すには、技能伝承の手順書づくり もあわせてどうぞ。

不良がくり返すのは、あなたの努力が足りないからではありません。 原因が、まだ仕組みになりきっていないだけです。
派手ではなくても、原因を一つひとつたどる今日の作業が、ものづくりの信頼を守っています。 「なぜ」を一段でも深くたどろうとしているなら、その品質はもう前に進んでいます。