
なぜなぜ分析のやり方、不良の原因を一緒にたどる
「この前直したはずの不良が、また出てしまった」。 朝、手直しの部品を前にして、ため息が出る。そんな朝は、ものづくりの現場では珍しくありません。
その場で対処はした。担当者にも声をかけた。 それでも同じ不良がくり返すと、「自分のやり方が甘いのかな」と落ち込んでしまいますよね。
でも、多くの場合、原因は人の不注意ではなく、仕組みのどこかに残っています。 この記事では、人を責めずに本当の原因までたどる「なぜなぜ分析」を、現場で回る最小のやり方で整理します。やり過ぎず、まずは2人・15分で回すことを前提にします。
結論:なぜなぜ分析は、起きた事実から「なぜ」を順にたどって、仕組みの原因まで降りる方法です。コツは3つだけ。事実から始める/人ではなく仕組みを問う/自分たちで対策できる深さで止める。これに「最少編成(2人)・時間枠(15分)・応急と恒久の切り分け」を添えると、現場で無理なく回ります。
なぜなぜ分析は、不良の「事実」から「なぜ起きたのか」を何段か降りて、おおもとの原因に届かせるやり方です。 むずかしい道具はいりません。紙とペンで始められます。
ただ、やり方を少し誤ると「誰が悪かったのか」を探す時間になってしまいます。 それを避けるため、まず次の3点を軸にしてください。
- 推測ではなく、確かめた事実から始める
- 「人」ではなく「仕組み」に向かって問う
- 自分たちで対策できる深さで止める
何が起きているか

不良が出たとき、私たちはつい「気をつけよう」で終わらせがちです。 でも「気をつける」は、人の集中力に頼った対策です。忙しい日や疲れている日には、また同じことが起きてしまいます。
なぜなぜ分析がうまくいかないときの共通点は、だいたい次の3つです。
- 最初の「なぜ」が、確かめていない推測になっている
- 答えが「確認不足」「意識が低い」など、人の問題で止まってしまう
- 「なぜ」を5回と決めて、無理に深掘りしすぎている
「5回」は目安です。大切なのは、自分たちで直せる原因に届くこと。3回で届くこともあれば、4回で十分なこともあります。
具体例で見る
たとえば「指定寸法より大きい部品が混ざっていた」という不良。
- 現象:寸法が規格より大きい部品が出荷前検査で見つかった
- なぜ①:加工後の寸法がばらついていた
- なぜ②:刃物(工具)が摩耗していたのに使い続けた
- なぜ③:工具を交換する目安が決まっていなかった
- なぜ④:交換時期を判断できるのがベテラン1人だけだった
ここまで降りると、「担当者が確認しなかったから」ではなく、「交換の目安が仕組みになっていないから」が見えます。対策も「気をつける」ではなく、「交換目安を数で決め、誰でも判断できる」に変わります。
注意点は、①の「ばらついていた」を確かめずに書かないこと。本当にばらついていたのか、現物や記録で確認してから次の「なぜ」へ進みます。事実の上に積まないと、全体が推測になります。
なお、現場ではまず「応急」と「恒久」を分けます。
- 応急:流出防止や選別など、まず止血
- 恒久:24~48時間以内に、なぜなぜで仕組み原因を決め、対策を一つ選ぶ
影響
原因が人で止まると、対策も「次から注意」になりがちです。 すると、しばらくは収まっても、人が変わったり忙しくなったりしたときに、また同じ不良が顔を出します。手直しやお客さま対応が重なると、現場の元気を削っていきます。
逆に、仕組みの原因まで届くと、対策は人に依存しにくくなります。 交換目安を数で決める。限度見本をそばに置く。記入のタイミングを固定する。こうした小さな仕組みが一つ増えるたびに、現場は少しずつ楽になります。
明日やること
大がかりに始めなくて大丈夫です。まずは直近の不良を一つだけ。
- 最少編成と時間枠を先に決める
- 人数:当事者+別工程または検査のどちらか1人(計2人)
- 時間:まずは15分。深掘りが必要なら別枠30~45分を設定(上長同席)
- ダラダラ続けず、超える場合は次の枠へ
- A4ひな形で軽く書く(写真1枚で記録OKの運用にする)
- 入れるのは5枠だけ:現象/確認方法/なぜ/対策を1つ/担当・期限
- 写真を1枚貼れば、現象と確認の記録は完了でよし
- 形式を揃えると、後で別様式に写すのも楽になります
- 事実で現象を一行にする
- 「いつ・どの工程で・何が・どうなったか」を見たまま書く
- 名前ではなく、条件や数値・状態で表す(分からない所は「公式情報で確認」でも可)
- まず応急(止血)を決めて実行
- 流出防止・選別・一時チェック強化など、今すぐできる一手を先に回す
- 応急は恒久ではない。24~48時間以内に恒久対策の検討へ
- 「なぜ」を一つずつ、確かめながら降りる
- 1段書くごとに、現物・記録・現場で確認してから次へ
- 記録がない/現物がない場合の代替
- 記録がない→5~10分の小さな実験で仮説を試す
- 現物がない→類似現物・限度見本・写真で代替
- 「○○さんが」で止まったら、「なぜそうせざるを得ない仕組みか?」に問い直す
- 対策は「明日から変えられる一手」に絞る(自分たちの権限内)
- 仕組み対策ミニリスト(例)
- 交換サイクル化(回数・時間・日付で目安化)
- 限度見本・合否見本の設置と更新ルール
- ポカヨケ(治具の向き/入らない・通らない仕掛け)
- 点検のタイミング固定(作業前・ロット切替時などに寄せる)
- チェック欄の位置・順番を変えて見落とし防止
- たくさん並べず、まずは1つに決める
- 担当・期限・フォローを決める
- だれが・いつまでに・どこを変えるかを1行で
- 後日振り返りは、朝礼5分か日次板のチェック欄1つで代替(週次で未実施を拾う)
- 自分たちの権限外に原因が出た場合
- 依頼先・依頼内容・期日を紙に書いて渡す(写しを手元に残す)
- 依頼メモ例:「依頼先/依頼内容/必要理由(不良との関係)/期日/回答者」
- エスカレーション条件(深掘りの合図)
- 客先クレーム、安全・法規に関わるもの、同一不良の再発3回以上
- 上長同席で30~45分の枠を設定して深掘り
- それ以外は2人・15分の簡易で可
- 顧客指定の様式(5Why/8Dなど)へのブリッジ
- この流れは、そのまま8Dの該当欄に写せます
- 現象(事実の一行)→D2(問題記述)
- 応急(止血策)→D3(暫定対策)
- なぜなぜ(事実で確認した原因)→D4(真因分析)
- 選んだ一手(恒久対策)→D5(恒久対策)
- 要求様式がある場合は、現場で書いたA4ひな形を写経し、公式指示に従って整えます
なぜなぜ分析は、文書をきれいに作ることが目的ではありません。 紙が多少ぐちゃぐちゃでも、再発が止まればそれで十分です。
なぜなぜ分析のチェックリスト
まずは「全部やる前提」をやめ、優先と代替を決めて回します。
- 必須(全件で守る4つ)
- 事実で現象を書く(推測で始めない)
- 人で止めない(仕組みに問い直す)
- 対策を1つに絞る(明日から変えられる一手)
- 担当・期限を決める
- できれば(状況に応じて+4つ)
- 各「なぜ」を現物・記録で確認(なければ小実験で代替)
- 「いつ・どこで・何が」を具体化
- 自分たちの権限内で打てる深さまで降りる
- 後日の振り返り予定(朝礼5分/日次板チェック欄)
- 免除条件
- 単発・軽微(廃棄や手直しコストが1時間相当未満、再発履歴なし)は「必須4のみ」で完了可
- 再発・客先・安全は8項目フルで実施
- 代替手段
- 記録がない→「確認=5~10分の小実験」で代替
- 現物がない→類似現物/限度見本/写真で代替
- 時間上限
- 簡易は15分、深掘りは45分を上限。超えたら次枠を設定
- エスカレーション
- 客先クレーム/安全・法規/再発3回以上は深掘り・上長同席・30~45分枠
全部を一度にそろえなくて大丈夫です。 まずは「人ではなく仕組みに問う」。この一つを意識するだけで、分析の質はぐっと変わります。
よければ、こちらも
- そもそもの不良を見つける仕組みは、検査表のつくり方、まず決めたい3つの項目 で整理しています。
- 原因をたどる中で見つけたコツや判断を次の人へ残すには、 技能伝承の手順書づくり もあわせてどうぞ。

不良がくり返すのは、あなたの努力が足りないからではありません。 原因が、まだ仕組みになりきっていないだけです。
派手ではなくても、原因を一つひとつたどる今日の作業が、ものづくりの信頼を守っています。 「なぜ」を一段でも深くたどろうとしているなら、その品質はもう前に進んでいます。