工程の間に置かれた部品コンテナの前でしゃがみ、中の部品を手に取って「これは何番の仕事だったか」と考え込んでいる町工場の担当者

作業指示書と現品票の整え方。指示ミスと手戻りを減らす7項目

「これ、何番の仕事だっけ」。

工程の間に置かれたコンテナの前で、そう言って手が止まる。 中身を見ればだいたい見当はつくけれど、確信は持てない。結局、事務所に戻って指示書を探すか、加工した本人を探して聞くことになる。

一回あたりは、数分の話です。 でも一日に何度もあって、しかも聞かれた側の手も止まる。そして本当に困るのは、確認しないまま「たぶんこっち」で進めてしまった日です。

この記事では、作業指示書と現品票に何を書いておけば現場が迷わずに済むのかを、項目単位で一緒に整理します。書式を立派にする話ではなく、探す時間と、聞き直す時間を減らすための話です。

結論:紙を増やすのではなく、作業指示書に7項目、現品票に6項目をそろえるだけで、指示ミスと手戻りはかなり減ります。とくに効くのは「図面の改訂記号」「良品の実数」「次工程」の3つ。この3つが書いてあるだけで、聞き直す用事の多くがなくなります。

進め方は、この順番です。

  1. いま流れている仕掛品を1つ選び、現品票だけで正体がわかるか試す
  2. わからなかった項目を、現品票に1つだけ足す
  3. 作業指示書のほうも、同じ考え方で足りない項目を埋める

一度に整った書式を作らなくて大丈夫です。足りない欄を1つ足すところから始められます。

何が起きているか

部品コンテナに下げられた現品票を大きく描き、上段・中段・下段の3つの欄に見出しラベルを付けた説明図
現品票は「この箱は何の仕事で、いま何個あって、次はどこへ行くのか」の3つが読めれば十分

指示ミスや手戻りは、伝え方が雑だから起きるわけではありません。 多くの場合、紙とモノが途中で離れてしまうことから始まります。

町工場の仕事は、一人で最初から最後まで作ることのほうが少なくなっています。 旋盤で削って、フライスに回して、外注へ熱処理に出して、戻ってきて検査して出荷する。工程が変わるたびに担当が変わり、その間にモノは何度も置き場を移ります。

最初に受け取った作業指示書は、たいてい機械のそばか事務所の棚にあります。 ところがモノのほうは、コンテナに入って通路の端に置かれる。ここで、情報とモノの距離が開きます

そして、この状態で次の人が受け取ると、選択肢はふたつです。聞きに行くか、推測で進めるか。 聞きに行けば時間が止まり、推測で進めれば手戻りの芽が残ります。どちらを選んでも損をする——そういう構図になっているだけで、現場の注意力の問題ではありません。

ここでいう現品票とは、モノそのものに付けておく小さな伝票のことです。 「この箱は何の仕事で、いま何個あって、次はどこへ行くのか」がその場で読めるようにしておく紙。作業指示書が「仕事全体の計画」なら、現品票は「いま目の前にあるモノの状態」です。役割が違うので、片方だけでは足りません。

作業指示書に入れたい7項目

作業指示書は、その仕事を最初から最後まで見渡すための紙です。 受注情報をそのまま印刷しただけになっていることも多いのですが、現場が使う紙としては、次の7つがそろっていると迷いが減ります。

#項目なぜ要るか
1製番・品番・品名すべての紙とモノをひもづける背番号になる
2指示数と、必要な良品数不良が出たとき、あと何個作るかの判断がつく
3客先納期と、社内の完了希望日出荷日から逆算した「現場の締切」がわかる
4図面番号と改訂記号古い図面で加工してしまう事故を防げる
5材料の材質・寸法・入手先支給材か自社手配かで段取りが変わる
6工程の順番と担当(外注工程も)誰の次が自分かがわかる
7検査のタイミングと合否の基準初物をいつ見るか、何を測るかで止まらない

製番は、その仕事に付ける通し番号のことです(オーダー番号、指図番号などとも呼びます)。呼び方はどれでも構いません。大事なのは、社内で1つに決めて、指示書にも現品票にも同じ番号を書くことです。ここがバラバラだと、あとから何をたどっても一致しません。

7項目の中で、いちばん効くのは4の改訂記号です。 改訂記号は、図面が直されたときに付く「A」「B」や「Rev.1」といった記号のこと。客先が図面を差し替えても、番号自体は変わらないことがあります。指示書に改訂記号まで書いておくと、手元の図面と照らして「これは前の版だ」と気づけます。

図面が新しくなったときは、古い図面をその場で回収するところまでセットにしておくと安心です。棚に残っている一枚が、半年後に使われてしまうことがあります。

現品票に入れたい6項目

現品票は、モノに付いたまま工程を一緒に流れます。だから、書く量は少ないほどいい。書くのに時間がかかる票は、忙しい日に必ず書かれなくなります。

このうち、聞き直しをいちばん減らしてくれるのが数量の書き方です。

たとえば、指示数100個の仕事で、旋盤工程が80個まで進んだとします。そのうち2個は寸法が外れて不良になりました。 このとき現品票に「80」とだけ書くと、次の人は箱の中身が80個の良品なのだと受け取ります。実際に入っているのは良品78個です。

書き方としては「78/100」のように、良品の実数と指示数を並べて書くのがいちばん誤解が少なくて済みます。分母を見れば足りない数がすぐ出るからです。上の例なら、100−78=22個。次の人は、この数字だけで段取りを組めます。

「良品/要確認/不良」の区分は、丸で囲むだけの形にしておくと続きます。とくに要確認の欄があると助かります。不良と言い切るほどではないけれど、次の人に見てほしい——そういうモノは必ず出てくるからです。行き先がないと、結局そのまま流れてしまいます。

なお、材料のロット番号は全部の仕事に要るものではありません。材料証明書の提出を求められる仕事や、後から製造時期をたどる必要がある仕事だけで十分です。全案件に義務づけると、書く負担のほうが勝ってしまいます。

書式より先に、置き方のルールを決める

項目をそろえても、票がモノから離れてしまえば意味がなくなります。 現場で決めておきたいのは、たった3つです。

  1. 現品票はモノから離さない(コンテナに下げる、フタに貼る、置き場所を1か所に決める)
  2. 数が変わったら、その場で書き換える(あとでまとめて、は忘れます)
  3. 工程を渡すときに、票の「次工程」を書いてから渡す

3つ目は、ひと呼吸だけかかります。でもここが、次の人の「何番の仕事だっけ」をいちばん減らします。

書式そのものは、A5の紙に手書き欄を並べたコピーで十分です。 最初からきれいなフォーマットを作ろうとすると、作ること自体が仕事になってしまいます。まずは手書きで回して、書きにくい欄・使われない欄が見えてきてから整えるほうが、結果的に早く定着します。

明日やること

明日、20分だけ時間が取れたら、この順番で試してみてください。

全部を一日でそろえる必要はありません。 現品票に「次工程」の欄を足すだけでも、明日から聞かれる回数は変わります。

指示書・現品票のチェックリスト

10個そろっている現場は、そう多くありません。 いま2つ3つに丸がつくなら、それは指示の流れがすでに回っているということです。残りは順番に足していけば大丈夫です。

よければ、こちらも

現品票を下げた部品コンテナが工程の順に並び、次の工程へ受け渡しながら短く言葉を交わす町工場の作業者ふたり

指示が伝わらないのは、現場の集中力が足りないからではありません。 工程が分かれて、人が変わって、モノだけが先に動く。そういう仕事の形なら、情報が置いていかれるのは自然なことです。

だから直すのは、人ではなく紙のほうです。 モノと一緒に動く紙を1枚だけ用意して、そこに「製番」「良品の実数」「次工程」の3つが書いてある。それだけで、明日の「これ何番だっけ」はひとつ減ります。

あなたがこれまで、聞き直しながらでも間違いなく流してきたこと。 その一つひとつが、まだ紙になっていないだけです。今日は欄をひとつ足すところまでで、十分です。