止まった機械の前でメーカーに部品の納期を電話で問い合わせ、入荷まで待つしかないと表情を曇らせる町工場の担当者の横顔と手元

止まってから慌てない、予備部品・消耗品の在庫の持ち方

いつも動いていた機械が、朝いちばんに動かない。 調べてみると一つの部品が寿命で、交換すれば直りそう——でも、その部品が手元にない。メーカーに電話すると「入荷まで一週間」。

その一週間、その機械の仕事は止まったまま。段取りを組み替え、外注に頭を下げ、納期の遅れをお客さんに連絡する。故障そのものより、部品が届くまで待つしかない時間のほうが、よほど現場に重くのしかかる。そんな経験に、心当たりはありませんか。

これは、段取りが悪かったからでも、点検を怠ったからでもありません。「いつか壊れる部品」を、壊れてから探し始める——その順番のままだと、どんなに丁寧に整備していても、この待ち時間はついて回ります。

結論:突発故障の痛手を軽くする近道は、機械そのものより「止まったときに要る部品」を先に手元へ置いておくことです。①過去に交換した部品と、止まると困る機械を書き出す、②その中から「入手に時間がかかる×止まると痛い」ものを予備で持つと決める、③使ったら補充する仕組みを一つ用意する——この3つを順に踏むと、全部を在庫しなくても、いざというときの「待ち時間」だけを狙って減らせます。抱え込むのは「全部の部品」ではなく「止まると困る一握り」です。

予備部品や消耗品は、多く持てば安心ですが、その分お金が寝て、置き場も食います。かといってゼロにすると、いざというとき何日も止まる。 だからここで決めたいのは「たくさん持つ」でも「持たない」でもなく、どれを、どれだけ持つかという線引きです。

まずは、次の3つを順番に見ていきます。

  1. 過去に交換した部品と、止まるといちばん困る機械を書き出す
  2. 「入手に時間がかかる」×「止まると痛い」もので、予備を持つものを絞る
  3. 使ったら補充する仕組みを一つ決めて、在庫が静かに切れないようにする

この順で見ていくと、「なんとなく不安だから買っておく」ではなく、「これは持つ・これは持たない」と、根拠を持って決められるようになります。

何が起きているか

部品が手元になくて機械が長く止まる現場には、よく似た事情があります。

どの機械のどの部品が消耗品なのか、頭の中にしかない。 前に交換したのがいつで、次はいつごろか、記録が残っていない。 メーカー取り寄せに何日かかる部品なのかを、壊れてから初めて知る。 気をつけてはいるけれど、日々の生産に追われて在庫を見直す時間がない。

これらの多くは、担当者の注意が足りないからではありません。 「壊れてから動く」しかない状態が、そのままになっているために起きています。壊れる前に手を打とうにも、何を持てばいいかの拠り所がないのです。

もう一つ見落とされやすいのが、消耗品です。刃具、ベルト、フィルター、パッキン、ヒューズ、潤滑油——数百円から数千円のものが多く、つい「そのとき買えばいい」と考えがちです。でも、こうした安い消耗品ほど「あると思ったら切れていた」が起きやすく、たった一つの欠品で高価な機械が止まってしまう。部品の値段と、止まったときの損失は比例しないのです。

だから最初の一歩は、あわてて何でも買い込むことではなく、「止まると困る部品」を見えるようにして、その中から持つものを選ぶことになります。

まず「交換した部品」と「止まると困る機械」を書き出す

部品を「入手の早さ」と「止まったときの痛さ」の2つの軸で見比べ、予備で持つものを選び分ける様子の説明図
「手に入るまでの時間」と「止まると痛いか」で見比べると、優先して予備を持つ部品が見えてくる。

予備を決める、いちばん確かな出発点は、これまで実際に交換した部品を書き出すことです。カタログをゼロから読む必要はありません。自分の現場が過去に困った履歴が、いちばんの情報源です。

紙一枚か、表計算ソフトに、こう並べるだけで十分です。

思い出せる範囲でかまいません。伝票や過去の発注履歴、ベテランの記憶をたどれば、「よく替える部品」「前に一週間止まった部品」がいくつか挙がってくるはずです。まずはこの一覧をつくることが、感覚だのみの在庫から抜け出す第一歩になります。

「入手に時間がかかる×止まると痛い」で持つものを絞る

一覧ができたら、全部を予備で持とうとしないことが大事です。ここで在庫するものを、二つの軸で絞り込みます。

この二つを見比べて、「手に入るのに時間がかかる」かつ「止まると痛い」に当てはまる部品を、優先して予備で持つと決めます。反対に「すぐ買えて、止まってもさほど困らない」ものは、無理に在庫しなくて大丈夫です。

消耗品は、少し考え方を分けます。刃具やベルト、フィルターのように必ず定期的に替わるものは、「止まると痛いか」より「切らさない」ことが大事です。最低でも1回分、できれば使うペースに合わせて1〜2回分を常に手元に置き、後述の補充ルールで切れないようにします。安いからこそ、欠品で機械を止めない備えの効きしろが大きい部分です。

全部の部品を在庫する必要はありません。この絞り込みで残った一握りに、お金と置き場を集中させる。それが、少ない負担でいちばん効く持ち方です。

使ったら補充する仕組みを、一つだけ決める

予備を持つと決めても、一度使ったきり補充を忘れて、いざというとき棚が空——これがいちばん多いつまずきです。ここを防ぐために、補充のきっかけを一つだけ用意します。難しい在庫管理システムはいりません。

ポイントは、仕組みを一つに絞ることです。あれもこれもとルールを増やすと続きません。「最後の1個を取ったら札を渡す」——まずはこれだけでも、静かに在庫が切れる事故はぐっと減ります。

具体例:一週間待ちのセンサーで止まっていた現場

たとえば、主力のNC旋盤が一台あり、その機械でしか受けられない仕事もある——そんな現場を思い浮かべてみます。

ある日、機械の位置決めセンサーが壊れて停止しました。メーカー取り寄せで入荷まで一週間。その間、その機械の仕事は止まり、一部は外注に出し、納期の遅れを何件かお詫びすることになりました。

この現場でまずやったのは、高い在庫をたくさん抱えることではありません。

抱えた予備は数点だけで、大きな在庫にはなっていません。それでも次に同じセンサーが壊れたときは、その場で交換して機械はその日のうちに動きました。止まった時間は一週間から数時間へ。「止まると痛い一握り」だけを狙って持つと、少ない在庫でも、いちばん効くところで待ち時間を消せるのです。

明日やること

明日、まず一つだけやるなら、これです。

この一年で交換した部品を、思い出せるだけ紙に書き出す。

伝票や発注履歴、ベテランの記憶をたどって、「よく替える消耗品」と「前に長く止まった部品」を挙げるだけで十分です。分類も、きれいな表も、後で構いません。

書き出せたら、その中で「取り寄せに時間がかかった」ものに一つ丸をつけてみてください。それが、あなたの現場でいちばん先に予備を持つ価値がある部品の候補です。全部をそろえるのは、その次の日からで大丈夫です。

チェックリスト

予備部品・消耗品の在庫を見直すとき、この項目を手元に置いてみてください。

全部を一度にそろえなくて大丈夫です。 まずは「交換した部品を書き出して、時間がかかる一つに丸をつける」——これひとつだけでも、次の突発故障の待ち時間を短くする備えになります。余力のある項目は、手が空いた日に少しずつで構いません。

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予備部品をそろえる仕事は、たくさんの在庫を抱えることでも、故障を完全になくすことでもありません。 過去に困った部品を書き出して、止まると痛い一握りだけを手元に置く。使ったら補充する合図を一つ決める。その小さな備えが、次に機械が止まった日の自分を、そして納期を待つお客さんを、静かに助けてくれます。

派手ではなくても、「止まっても、これはすぐ替えられる」という部品が一つ手元にできたなら、それはもう突発故障への備えが一歩進んだということです。全部をそろえられていなくても、交換した部品を今日ひとつ書き出せたなら、それで十分に前へ進んでいます。

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