
材料費の歩留まりと端材ロスを見積に織り込む方法
「見積どおりに作ったのに、なぜか利益が薄い」。 材料を発注して、いざ加工してみると、図面の分だけでは足りなかった。 切り代や掴み代、不良の作り直しで、思ったより材料を使っていた。
そんな経験はありませんか。
材料費は、図面に出ている正味の体積や重さだけで計算しがちです。 でも実際の現場では、その正味どおりには材料は取れません。 端をつかむ分、切り落とす分、たまに出る作り直しの分。 それらが少しずつ積み重なって、利益を静かに削っていきます。
この記事では、材料費に歩留まりと端材ロスを織り込む手順を、一緒に整理します。
結論:材料費は「正味の材料費 ÷ 歩留まり率」で見積もると、ロスの分を取りこぼしにくくなります。まず自社の歩留まりが何割くらいかをざっくりつかみ、見積の材料費に割り戻す。この一手間だけで、後から利益が消える見積を減らせます。
まず、歩留まりという考え方を押さえる
歩留まりとは、買った材料のうち、製品として使えた割合のことです。
たとえば、10kgの材料を仕入れて、製品として残ったのが8kgなら、歩留まりは8割です。 残りの2kgは、切り代・端材・掴み代・不良などで失われた分になります。
ここで大事なのは、見積で使う材料費は「製品に残る正味」ではなく「実際に買う量」で考える、ということです。 お金を払うのは、失われる2kgも含めた10kg分だからです。
正味だけで見積もると、この失われる分が見積から抜け落ちます。 そのぶんは、誰も払ってくれないまま自社が負担することになります。
手順を小さく分けて見積に織り込む

一度で完璧な数字を出そうとせず、小さく始めましょう。
まず、正味の出発点を、無理のない方法で決める。 教科書どおりなら図面から正味の体積や重さを拾いますが、図面から正味を厳密に出すこと自体が手間で、そもそも拾いにくい部品も多いものです。 図面に頼りにくいときは、製品の実測重量に単価をかける、あるいは「1個あたり買った材料の長さ・枚数」から逆算する、といった簡易な出発点でかまいません。 正確な計測でなくても、おおよその割合がつかめれば十分です。
次に、買った量と製品に残る量を比べて歩留まりをつかむ。 よく作る部品で、実際に仕入れた量と製品に残った量を比べてみます。 「代表的な一品」が決めにくい多品種少量の現場では、材料の形状(板・丸棒・アングルなど)ごとに1〜2品だけ拾う、あるいは「定尺から何個取れるか(取り都合)」で見ると、品種が多くても割合をつかめます。これが自社の歩留まりの出発点になります。
そして、正味の材料費を歩留まり率で割り戻す。 たとえば正味の材料費が800円で、歩留まりが8割なら、800円 ÷ 0.8 = 1,000円。 この1,000円が、ロスまで含んだ見積用の材料費です。 割り算なので、歩留まりが下がるほど見積額は大きくなります。ここが正味との差です。
少量品では「定尺1本から何個取れるか」を必ず見る。 歩留まり率とは別に、効くのが取り都合です。1本買って数個しか使わない端材丸ごとのロスは、少量品ほど利益を一番削ります。 定尺1本(板なら1枚)に対して何個取れるかを数え、使い切れない分は割高として見積に乗せておきます。
余裕があれば、材料の種類ごとに歩留まりを分ける。 板金の抜き加工と丸棒の削り出しでは、出るロスの量が違います。 ただ最初から分けるのが重ければ、全体で「8割」など平均値ひとつでも始められます。慣れてきたら「板物は◯割」「削り物は◯割」と2〜3種類に分けると精度が上がります。
作り直しが多い加工は、必要なときだけ別で見ておく。 試作や難しい公差の部品は、不良で作り直す前提の材料も要ります。 歩留まりに含めてもいいですが、読みにくいときは「予備◯個分」と別枠で見ておくと、後で振り返りやすくなります。
歩留まりの数字は、一度決めたら固定ではありません。 ただ毎回1品ずつ実使用量を記録するのは大変なので、材料費が見積とズレた案件や赤字になった案件だけ、事後で見直せば十分です。 そこだけ次回の歩留まりを少し下げる。この繰り返しで、だんだん自社の実態に近い数字になっていきます。
端材ロスを見積に織り込むチェックリスト
全部をやろうとすると、特に一人・少人数の見積担当には重くなります。まずは最低ラインの2点だけ満たせば及第。残りは余裕があるときや大きい見積のときの任意項目と考えてください。
最低ライン(ここだけは)
- 材料費を、図面の正味だけで計算していないか
- 正味の材料費を、歩留まり率で割り戻しているか(歩留まりは最初は全体で「8割」など平均値ひとつでも可)
余裕があれば/大きい見積のとき
- 少量品で「定尺1本から何個取れるか(取り都合)」を見ているか
- 板物・削り物など、加工の種類で歩留まりを分けているか
- 作り直しが出やすい部品に、予備の材料を見ているか
- 材料の最小発注単位(定尺・ロット)での割高分を見ているか
- 見直しは毎回でなくてよい。材料費がズレた案件・赤字になった案件だけ事後で比べているか
材料の単価や最小発注の単位は、仕入れ先や時期によって変わります。 鋼材市況や為替で動くこともあるので、大きな見積のときは最新の単価を仕入れ先に確認しながら進めると安心です。
よければ、こちらも
- 材料費だけでなく加工の手間賃も見積の柱です。加工賃の時間チャージを自社で計算する手順 もあわせてどうぞ。
- 見積で抜けやすい項目をまとめて点検したいときは、見積で見落としがちな原価 で整理しています。

材料費の見積は、一度で正解が出る計算ではありません。 作って、比べて、少しずつ自社の数字に近づけていくものです。
派手ではなくても、ロスまで読み切ろうとする今日の一手間が、利益を静かに守っています。 歩留まりをひとつ見直そうとしているなら、その見積はもう一歩前に進んでいます。