作業台のそばで不良品を手に取り、壁に貼った記録用紙に「正」の字で数を書き込む町工場の担当者の情景

不良率を記録して傾向をつかむ、簡単な集計の始め方

「また同じところで弾かれた」。 その場で選別して、手直しして、今日もなんとか出荷した。 でも同じ不良が先月も、たぶん先々月も出ていた気がする——そんなもやもやを抱えていませんか。

不良が出るたびに直しているのに繰り返すのは、現場が手を抜いているからではありません。 その場の対応で精一杯で、「いつ・何が・どれくらい」出ているかを振り返る余裕がないだけです。 出たものをその都度つぶしていると、記憶は上書きされ、傾向は見えないまま消えていきます。

この記事では、立派な帳票ソフトを入れずに、紙一枚から始められる不良率の集計と、そこから傾向をつかむ読み方を、一緒に整理します。

結論:まずは「日付・品名・不良の種類・数」を、その場で「正」の字で書き足すだけ。集計は月末に電卓で不良率(不良数 ÷ つくった数)を出すだけで十分です。数字がそろって初めて、勘ではなく事実で「どこから手を打つか」が見えてきます。

数えると聞くと身構えますが、最初に用意するのはノートか紙一枚です。 決めることは、次の三つだけです。

  1. どの単位で数えるか(工程ごと・品番ごと・不良の種類ごとのどれか一つ)
  2. いつ書くか(不良が出たその場で、あとでまとめない)
  3. いつ集計するか(週末か月末、五分でいい振り返りの時間)

この三つが決まっているだけで、忙しい日でも「とりあえず正の字を一本足す」ことなら続きます。

手順を小さく分けて始める

その場で数える・不良率を出す・傾向を読むの三段階を左から順に指でたどる担当者の説明図

最初から全部の工程を細かく取ろうとすると、記録そのものが仕事になって続きません。小さく刻みます。

まず、その場で数える。 用紙に「日付・品名・不良の種類・数」の列だけ作り、不良が出たらその種類の欄に「正」の字を一本足します。 大事なのは、あとでまとめて思い出そうとしないこと。記憶は驚くほど当てになりません。 不良の種類は、最初は「キズ・寸法・欠け・その他」くらいのざっくりで十分です。細かすぎると分類で迷って手が止まります。 つくった数(生産数)も同じ用紙にメモしておくと、あとで率を出すときに探さずに済みます。

次に、月末に不良率を出す。 不良率は、不良数 ÷ つくった数 × 100(%) です。 たとえば1,000個つくって不良が15個なら、15 ÷ 1,000 × 100 = 1.5%。電卓一つで出ます。 最初は品番ごとでも、工程ごとでも、まとめて全体でも構いません。「先月と比べてどうか」を見たいので、同じ出し方で毎月続けることのほうが、精密さよりずっと大事です。

その後、傾向を読む。 数字が二か月、三か月とたまってくると、「この品番だけ不良率が高い」「月初にキズが増える」といった偏りが見えてきます。 このとき、犯人さがしをしないことです。傾向は人を責めるためでなく、どこから手を打つと一番効くかを決めるための材料です。 一番多い不良の種類、一番率の高い品番——その一つに絞って原因を掘り下げると、限られた時間を無駄なく使えます。原因の掘り下げ方は、あとで紹介する記事もあわせてどうぞ。

数字は、完璧にそろえる必要はありません。 数え漏れた日があっても、続けているうちに大きな傾向は見えてきます。使いながら、自分の現場に合う数え方へ直していけば大丈夫です。 なお、取引先へ提出する品質データや不良率の定義が決められている場合は、その取り決めに合わせる必要があるので、契約や仕様書の最新の内容をその都度確認しながら進めると安心です。

不良率の集計を始めるチェックリスト

全部にチェックがつかなくて大丈夫です。最初は上の1〜3、つまり「その場で数えて記録する」ところまでできれば十分。集計や傾向の読み(4〜7)は、記録がたまってから始めれば構いません。忙しい日は、正の字を一本足すだけでも確かな一歩です。 立派な集計表は要りません。まずは紙一枚に「日付・品名・不良・数」の列を引くことから始めてみましょう。

よければ、こちらも

たまった記録用紙を手に、傾向が見えて少し表情が明るくなった担当者が前を向く情景

不良の集計は、その場の直しで手一杯な現場でも始められます。 出たものを一本の「正」の字で残しておく。月末に電卓で率を出す。その積み重ねが、いつか「ここから手を打とう」という確かな一手に変わります。

派手ではなくても、今日数えた一つの不良が、来月の不良を一つ減らす手がかりになります。 用紙に最初の一本を書いた時点で、あなたの現場はもう、勘から事実へ動き始めています。

関連用語