
保全記録の残し方、故障の「またか」を減らす一枚
同じ機械が、また同じところで止まった。 「前にもこれ、あったよな」と思うのに、いつだったか、どう直したかは、もう思い出せない。
そんな経験はありませんか。
頭の中では覚えているつもりでも、忙しい日々のなかで記憶はどんどんあいまいになります。 故障が起きるたびに、その場で直して、また次の仕事に戻る。 それを繰り返しているうちに、「気づけば同じトラブルを何度も踏んでいた」ということが起こります。
これは、現場の注意が足りないからではありません。 止めた機械を早く動かすことが最優先の現場では、記録は後回しになりがちです。 責められるような話ではなく、どこの町工場でもよくあることです。
この記事では、故障の傾向が少しずつ読めてくる保全記録の残し方を、一緒に整理します。
結論:保全記録は立派な帳票よりも、「日付・機械・症状・原因・処置・部品」を一行で残せる一枚があれば十分です。同じ欄で書きためると、あとから「またか」の故障が見えてきて、次の一手を打ちやすくなります。
故障を減らす第一歩は、直したことを忘れない形で残すことです。 そのために、まず次の3つから始めます。
- 一行で書ける記録用紙を一枚だけ用意する
- 直したその場で、記憶が新しいうちに書く
- 月に一度だけ、同じ機械の行を並べて眺める
一度に立派な保全システムを作らなくて大丈夫です。 まずは、一枚の紙から始めましょう。
何を残すと「傾向」が見えるのか

記録は、細かく書けば書くほどよい、というものではありません。 項目が多いと書くのが大変になり、続かなくなります。 あとから傾向を読むために、最低限ほしいのは次の6つです。
日付・機械の名前(番号)・症状・原因・処置・使った部品。
この6つがそろっていると、あとで同じ機械の行を並べたときに、 「この機械は、月末の忙しい時期に止まりやすい」 「同じベアリングを、半年で2回替えている」 といったことが見えてきます。
とくに大事なのが「症状」と「原因」を分けて書くことです。 症状は「異音がした」「急に止まった」など、起きたこと。 原因は「ベルトがゆるんでいた」「切り粉が詰まっていた」など、調べてわかったこと。 この2つを分けておくと、あとで「同じ症状でも原因は違った」といった気づきにつながります。
原因がその場で分からないときは、無理に埋めなくて大丈夫です。 「原因:不明(様子見)」と正直に書いておけば、次に同じ症状が出たときに手がかりになります。
その場で書く、月に一度だけ眺める

記録は、書くタイミングと見るタイミングを決めておくと続きます。
書くのは、直したその場で。 機械が動き出すと、ほっとして記録は後回しになりがちです。 でも、時間がたつほど「どこがどうだったか」はあいまいになります。 処置が終わって手を拭くまでの間に、一行だけ書く。それくらいの軽さがちょうどいいです。 記録用紙とペンは、事務所ではなく、工具のそばや機械の近くに置いておくと書きやすくなります。
見るのは、月に一度だけで十分です。 毎日眺める必要はありません。 月末や月初に、同じ機械の行だけを並べて眺めてみる。 すると、「この機械、今月2回目だな」「そろそろあの部品が寿命かな」と、次の一手が見えてきます。 止まる前に部品を用意しておく、点検の頻度を少し上げる。そうした先回りができるようになります。
なお、部品の交換周期や点検の基準は、機械の種類やメーカーの指示によって変わります。 安全に関わる部分は、取扱説明書やメーカーの最新情報、保全担当の方に確認しながら決めると安心です。 ここでは、現場で「明日から記録を残しやすくする工夫」に絞って整理しています。
続く保全記録のチェックリスト
- 記録は「日付・機械・症状・原因・処置・部品」の6項目にしているか
- 一件を一行で書ける分量におさえているか
- 「症状」と「原因」を分けて書けるようになっているか
- 原因が不明なときは「不明」と正直に残せる形か
- 記録用紙とペンを機械のそばに置いているか
- 直したその場で書く、と決めているか
- 月に一度、同じ機械の行を並べて眺める時間をとっているか
全部を一度にそろえる必要はありません。 今日、故障が一件あったなら、その一行を残す。それだけで、次の「またか」は少し減っていきます。
よければ、こちらも
- 日々の点検から続けたいときは、続く設備点検表のつくり方 も一緒にご覧ください。
- 止まる前の兆しに気づきたいときは、設備の異音・振動の点検 が参考になります。
- 部品切れで慌てないための備えは、予備部品・消耗品の在庫の持ち方 も役立ちます。
保全記録は、きれいに書きためること自体がゴールではありません。 同じ故障で二度、手を止めずにすむ。その一枚があるだけで、現場は少し楽になります。
派手ではなくても、今日残した一行が、機械と納期を静かに守ってくれます。 記録を残そうと考えている時点で、その保全はもう前に進んでいます。