
来週の忙しさを先に読む、負荷山積み表のつくり方と使い方
月曜の朝、受注票の束を見て「今週も何とかなるだろう」と思っていたら、水曜あたりでマシニングだけが詰まって、結局土曜出勤になった——。 そんな週、ありませんか。
不思議なのは、受注が急に増えたわけでもないのに、なぜか特定の機械の前だけ仕掛品が山になることです。 これは、段取りが下手だからでも、見通しが甘いからでもありません。 「今週どれだけの仕事があるか」は数えていても、「その仕事がどの機械に、何時間ぶん乗るか」は数えていない——ただそれだけの話です。
この記事では、来週の忙しさを事前に数字で読む「負荷山積み表」を、紙1枚から始める形で一緒に組み立てます。
結論:負荷山積み表は「①機械(工程)ごとに、1週間で使える時間=能力を出す → ②受注をその機械ごとに振り分け、加工時間+段取り時間を足して負荷を出す → ③能力の線を引いて、はみ出した分だけ手を打つ」の3ステップで作れます。全工程をそろえなくていいので、まずは一番混む機械1台から始めるのがおすすめです。
※「負荷山積み」とは、これから作る仕事に必要な時間を、設備や人ごとに積み上げて見えるようにすること。積み上げた高さ(負荷)と、使える時間(能力)を見比べるための表です。
何が起きているか
工程が乱れる週というのは、たいてい仕事の「総量」ではなく「偏り」で乱れています。
受注票を数えれば10件。それは分かる。 でも、その10件のうち7件がフライス、3件が旋盤だとしたら、フライスの前だけで渋滞が起きます。総量では回るはずなのに、実際は回らない。
この偏りが見えないまま週に入ると、こういう順番で事が進みます。
- 月曜:とりあえず納期の近い順に流し始める
- 水曜:フライスの前に仕掛品が溜まり始めるが、「まあ何とかなる」で進む
- 木曜:追いつかないことが確定するが、もう外注も間に合わない
- 金曜:客先に納期の相談をするか、残業・休日出勤で吸収する
問題は、木曜まで気づけなかったことではありません。 気づける材料が、月曜の時点で表になっていなかったことです。
負荷山積み表は、この「木曜の気づき」を「先週の金曜」に前倒しするための道具です。 先に分かれば、打てる手が増えます。外注に出す、順番を入れ替える、客先に一言相談する——どれも、木曜にやるより金曜にやるほうがずっと穏やかに済みます。
具体例:能力と負荷を並べて、はみ出しを見つける

紙1枚で作れる形にしてみます。縦に機械(工程)、横に日付(または週)を並べた表を用意します。
まず、能力(使える時間)を出します。
1日8時間稼働、稼働日が5日なら、単純には40時間。 ただし実際には、点検・清掃・打ち合わせ・急な手直しで時間は削られます。ここを100%で見ると必ず外れるので、8割程度(この例なら32時間)を実力値として置いておくと、現実に近い表になります。
次に、負荷(必要な時間)を積みます。
受注1件ごとに、その機械で必要な時間を出します。
- 加工時間:1個あたりの加工時間 × 数量
- 段取り時間:段取り替え1回ぶん(数量に関係なく毎回かかる)
たとえばフライスで、加工0.2時間×80個=16時間、段取り1.5時間なら、その仕事の負荷は17.5時間です。 これを機械ごとに足していきます。
そして、見比べます。
- フライス:能力32時間に対して、負荷41時間 → 9時間はみ出している
- 旋盤:能力32時間に対して、負荷18時間 → 14時間の余裕がある
ここまで来れば、来週の課題は「忙しい」ではなく「フライスが9時間ぶん多い」という具体的な形になります。 9時間なら、外注に1件出せば収まるかもしれない。旋盤で代替できる部品があるかもしれない。1件だけ客先に3日待ってもらえないか聞いてみてもいい。
段取り時間を忘れないのが、この表のいちばんの勘どころです。 多品種少量の現場では、段取りが負荷の3割以上を占めることも珍しくありません。加工時間だけで積むと、表はいつも「余裕あり」と嘘をつきます。
現場に与える影響
負荷が先に見えると、変わるのは残業時間だけではありません。
納期回答が落ち着きます。 「たぶん来週いっぱいで」ではなく、「フライスが再来週の火曜に空くので、水曜出荷でお願いします」と言えるようになります。根拠のある回答は、多少長くても客先に通りやすいものです。
特急品の判断ができます。 飛び込みが来たとき、「入れられるかどうか」を勘ではなく空き時間で答えられます。断るときも「今週はフライスが埋まっているので、来週頭なら」と代案を出せます。
残業や外注が、事後処理から事前の選択になります。 金曜に「9時間はみ出す」と分かって外注を1件出すのと、木曜に「間に合わない」と分かって残業でしのぐのとでは、かかるお金は似ていても、現場の疲れ方がまるで違います。
そして、いちばん大きいのは「間に合わないかもしれない」という漠然とした不安が、数字に変わることかもしれません。 不安は数字にした瞬間、対処できる課題になります。
明日やること
全工程ぶんの表をいきなり作る必要はありません。 まずは、いつも詰まる機械を1台だけ選んで、来週ぶんを1回作ってみましょう。
- 一番混む機械を1台選ぶ(毎週その前に仕掛品が溜まる機械でかまいません)
- 来週の使える時間を出す(稼働日数 × 1日の稼働時間 × 8割)
- 来週その機械に乗る仕事を書き出す(受注票・工程表から拾う)
- 1件ずつ「加工時間×数量+段取り時間」を足す(標準時間がなければ、経験値でざっくりで大丈夫です)
- 合計と使える時間を見比べ、はみ出しの時間数を出す
- はみ出しがあれば、外注・順番入れ替え・納期相談のどれかを金曜のうちに決める
所要は、慣れれば15分ほど。 毎週金曜の夕方に15分だけ、この表を更新する時間を取れれば十分です。
標準時間が整っていなくても、止まらなくて大丈夫です。 最初は「この部品はだいたい半日」でかまいません。表を回すうちに、見込みと実績のズレが分かってきて、数字は勝手に育っていきます。
負荷山積み表のチェックリスト
まず1つだけやるなら、これだけで十分です。
- 一番混む機械1台について、来週の「使える時間」と「必要な時間」を数字で並べたか
ここさえ押さえれば、来週の山は先に見えます。 時間が取れないうちは、残りは飛ばして構いません。下のリストは、慣れてきたら少しずつ確認する補助です。一度に全部そろえる必要はありません。
慣れてきたら確認:
- 能力を100%ではなく8割程度の実力値で見ているか
- 負荷に段取り時間を足しているか(加工時間だけになっていないか)
- 外注に出している工程も、戻り待ちの日数として表に置いているか
- 手直し・再加工の実績ぶんを、多少の余白として見込んでいるか
- 人が足りない工程(検査・仕上げなど)も、設備と同じように積んでいるか
- 毎週決まった曜日に更新する時間を決めているか
- はみ出しが出たとき、誰が何を判断するかを決めてあるか
週に15分、来週を先に眺めておく。それだけで、木曜の慌ただしさは静かに減っていきます。
よければ、こちらも
- 積む時間の根拠になる標準時間は、標準時間・工数の決め方 で整理しています。
- どの機械が詰まりやすいかを見極める話は、ボトルネック工程の見つけ方と負荷の平準化 もあわせてどうぞ。
- 表を現場で共有する形にするなら、紙の生産計画をホワイトボードで見える化する手順 が参考になります。
- 空き時間が読めると変わる納期の伝え方は、後工程に迷惑をかけない納期回答の組み立て方 でふれています。
- 飛び込みが入ったときの扱いは、飛び込み・特急品で工程が乱れない割り込みルール にまとめました。

来週の忙しさは、来週になってから分かるものだと思われがちです。 でも、機械ごとに時間を積んでみると、山は驚くほど先に見えます。
見えたからといって、仕事が減るわけではありません。 それでも、「木曜に慌てる」が「金曜に決める」に変わるだけで、現場の空気はずいぶん違います。
15分の表づくりを来週ぶんだけやってみようと思えた時点で、もう来週の土曜出勤はひとつ減っているかもしれません。