動いている工作機械の前で、手元のメモ用紙に機械の止まった時間を書き留めながら、稼働の状態を落ち着いて確かめている町工場の現場担当者

設備の稼働率と可動率、違いと測り方をやさしく整理

「うちの機械、稼働率が低いから何とかしよう」——朝礼でそう言われても、では稼働率とは何の数字なのか、正直はっきりしないまま話が進むこと、ありますよね。

ある人は「一日のうち機械が動いていた割合」だと思っている。 別の人は「注文が詰まっていて忙しかったかどうか」だと思っている。 また別の人は「故障せずにちゃんと動いてくれたか」を思い浮かべている。 同じ「稼働率」という言葉なのに、頭の中で見ているものがバラバラなのです。

この記事では、よく混同される「稼働率」と「可動率(べきどうりつ)」の違いを整理して、それぞれをどう測ればいいか、そしてどちらから手をつければ改善の糸口になるかを、一緒に見ていきます。 むずかしい計算システムは要りません。メモ用紙とストップウォッチ、あるいは日々の記録だけで始められるところまで、小さく崩していきましょう。

結論:「稼働率」と「可動率」は別物です。可動率(べきどうりつ)は、動かしたいときに機械がちゃんと動いてくれた割合で、100%に近いほど良い設備の健康診断。稼働率は、その機械をどれだけ使ったかの割合で、受注量や計画で決まるため必ずしも100%が正解ではありません。改善の最初のとっかかりは、注文を増やす前にできる可動率のほう——つまり「動かしたいのに止まっていた時間」を記録して減らすところから始めるのがおすすめです。

まず、この記事で押さえたいのは次の3つです。

  1. 可動率と稼働率は、見ている「分母」が違う別々の数字だと知る
  2. 可動率は「止まった時間」を書き留めるだけで測り始められる
  3. まず可動率(動かしたいのに止まった時間)から手をつける

この3つを分けておくと、「稼働率を上げろ」という言葉に振り回されず、いま自分の現場で何を測ればいいかが見えてきます。

何が起きているか

稼働率という言葉が現場で噛み合わないのは、担当者の理解が足りないからではありません。 同じ言葉が、指標として二つ以上の意味で使われていることが原因です。

たとえば、こんなすれ違いが起きます。

社長は「注文に対して機械が遊んでいないか(どれだけ使えているか)」を気にしている。 現場のリーダーは「故障やチョコ停で、動かしたいのに止まってしまう時間」を気にしている。 経理は「設備投資に見合うだけ回っているか」を気にしている。

どれも大事な視点ですが、見ている分母が違います。 分母がそろわないまま「稼働率」で会話をすると、片方は「注文が少ないのが問題」と言い、もう片方は「故障が多いのが問題」と言って、話が交わりません。

だから最初の一歩は、いきなり数字を追いかけることではなく、言葉を二つに分けることです。 「動かしたいときに動いてくれたか(可動率)」と「どれだけ使ったか(稼働率)」。 この二つを分けるだけで、現場の会話がずいぶん整理されます。

稼働率と可動率は「見ている分母」が違う

稼働率と可動率が別々の分母を見ている二つの指標であることを、動く時間と止まる時間の帯で対比して示した説明図
可動率は「動かしたいのに止まっていた時間」を見る設備の健康診断。稼働率は「フルに使える時間のうちどれだけ使ったか」を見る使用度合い。分母が違う別々の物差し。

二つの言葉を、現場の感覚で言い換えてみます。

可動率(べきどうりつ)は、「動かしたいときに、ちゃんと動いてくれたか」です。 たとえば、この機械を今日6時間動かす予定だったのに、故障やチョコ停、段取りのトラブルで1時間止まってしまったとします。すると、動かしたかった6時間のうち5時間しか動けなかった。この「動かしたい時間に対して、実際に動けた割合」が可動率です。

可動率は、100%に近づけるほど良い数字です。動かしたいのに止まる時間は、故障・チョコ停・段取り待ち・材料待ちなど、減らせるロスだからです。「べきどうりつ」と読み分けるのは、同じ「稼働率」と音で混ざらないための現場の知恵でもあります。

いっぽう、稼働率は、「その機械を、使える時間のうちどれだけ使ったか」です。 たとえば就業時間8時間のうち、注文があって実際に4時間動かしたなら、稼働率は半分。残りは注文がなくて機械が空いていた時間です。

稼働率は、必ずしも100%が正解ではありません。注文が多ければ上がり、少なければ下がる、受注や計画に左右される数字だからです。むしろ100%に張りついていたら、特急に対応する余力がない、という見方もできます。

同じ「機械が動く」話でも、可動率は設備の健康診断、稼働率は使い具合のものさし。混ぜないことが、改善の入口になります。

可動率は「止まった時間」を書き留めるだけで測れる

可動率と聞くと難しそうですが、測り始めるのに要るのは、一枚のメモ用紙だけです。

やることは、「動かしたかったのに止まっていた時間」を、止まるたびに書き留めること。これだけです。

一日の終わりに、止まっていた時間を合計します。 そして「今日、この機械を動かしたかった時間」から引き算するだけで、可動率のおおよそがつかめます。

最初から全部の機械でやろうとしなくて大丈夫です。 まずは、いちばんよく止まる気がする一台を選んで、一週間だけ記録してみましょう。 数字そのものより、「何で止まっているか」の内訳が見えてくることのほうが、ずっと大きな収穫です。止まる理由が「段取り待ちが多い」なのか「チョコ停が多い」なのかで、次に打つ手はまったく変わってきます。

チョコ停のように短くて記録しづらい停止は、つい見過ごしがちです。細かい停止の拾い方はチョコ停を記録して減らす、小さな停止の潰し方でも整理しているので、あわせて使ってみてください。

稼働率は「使える時間」を分母にして見る

稼働率のほうは、受注や計画に左右されるぶん、可動率より少し見方に注意が要ります。

分母をどう置くかで、同じ機械でも数字が変わるからです。

どちらが正しいということはなく、何を知りたいかで分母を選びます。 「日中の段取りで機械が空いていないか」を見たいなら就業時間で。「高い設備を入れたけれど夜間も含めて回せているか」を見たいなら暦時間で。目的を先に決めてから測ると、数字の意味がぶれません。

そして大事なのは、稼働率が低いこと自体を、すぐ悪いと決めつけないことです。 稼働率が低い理由には、注文が少ない、段取りに時間がかかっている、可動率が低くて止まっている——いくつも原因が混ざっています。 だからこそ、稼働率という「結果の数字」だけを見て一喜一憂するより、まず可動率という「中身の数字」を分けて見るほうが、打ち手が具体的になります。

まず手をつけるなら「可動率」から

稼働率という結果の前に、まず可動率で止まる時間を減らすところから手をつける改善の順番を示した説明図
注文を増やす前にできるのは、動かしたいのに止まっていた時間を減らすこと。可動率を先に上げると、同じ注文でもこなせる量が増える。

どちらから改善するか迷ったら、まずは可動率からをおすすめします。

理由はシンプルで、稼働率を上げるには注文を増やす必要があることが多く、それは現場だけでは動かしにくいからです。営業や受注の話が絡みます。 いっぽう可動率は、「動かしたいのに止まっていた時間」を減らす話なので、現場の工夫で今日から手をつけられます。故障を減らす、チョコ停を潰す、段取り待ちを縮める、材料を切らさない——どれも現場の内側でできることです。

しかも、可動率が上がると、同じ注文でもこなせる量が増えます。 つまり、可動率の改善は「注文が同じでも、余裕が生まれる」効果につながります。その余裕が、特急対応や納期短縮の力にもなっていきます。

止まる時間の記録が一週間たまったら、内訳のいちばん大きいものから一つだけ選んで対策してみましょう。 「段取り待ちが多い」なら段取りの外段取り化を、「チョコ停が多い」ならその機械の清掃・給油や小さな不具合の手当てを。故障が繰り返し起きているなら、保全記録を残して故障の傾向を読む仕組みづくりのように、記録から傾向をつかむのも効いてきます。

一度に全部は要りません。いちばん止めている一つを減らせたら、それだけで可動率は目に見えて動きます。

稼働率・可動率を測り始めるためのチェックリスト

忙しい現場でも回せるよう、二段に分けました。上の最低ラインだけでも、言葉のすれ違いはぐっと減ります。

まずはここだけ(最低ライン)

余力があれば

全部を一度にそろえなくて大丈夫です。 まずは今日、一台の機械が止まった時間をメモに書き留める、それだけでも見えてくるものは変わります。余力のある項目は、手が空いた日に少しずつで構いません。

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稼働率と可動率は、似た言葉でも見ているものが違います。 可動率は「動かしたいときに動いてくれたか」という設備の健康診断、稼働率は「どれだけ使えたか」という使い具合のものさし。この二つを分けるだけで、「稼働率を上げろ」という言葉に振り回されずに済みます。

派手な改善でなくても、一台の機械が止まった時間をメモに書き留めるその作業が、現場の余力と納期を静かに守っていきます。 今日ひとつ、いちばんよく止まる機械の停止時間を記録し始められたなら、その現場はもう改善の入口に立っています。

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